チラシなどで良さそうな土地があると、「早く抑えなければ!」と焦るばかりに、建物にかける予算や、土地と建物を含めた総額を深く考えずに、土地を先に購入した結果、小さな家しか建てられなかったという失敗談はよく聞きます。
焦る気持ちも分かりますが、快適な家(建物)で暮らすために、土地探しから土地購入までに確認すべきことを紹介します。
【注文住宅を建てる7ステップ】
- 資金計画を立てよう
- 間取りをイメージしよう
- 構造や性能を考えよう
- 土地を購入しよう
- 依頼先を探そう
- 設計・工事を依頼しよう
- 住宅ローンを申し込もう
事前に注文住宅会社に相談しよう
まず気に入った土地を購入する前に、ハウスメーカー、工務店、設計士さんに相談しましょう。
なぜなら、基本的に不動産屋さんの目的は「その土地をただ売る」ことであり、家を建てた後のことまで考えてくれるわけではないからです。
一方、建築の専門家に相談すれば、土地をパッと見ただけで、どういう家が建てられるのかアドバイスをくれたり、不動産屋さんでは意識しないような土地のリスクも教えてくれます。
本当に条件の良い土地を探すためには、資金計画を立てて、仮の図面くらいは作っておくくらいの準備が必要です。
予算的に土地にいくらまでかけられるか把握しよう
建設予算との兼ね合い
詳しくは「家を建てるにはいくら必要?」でご紹介していますが、
家を建てるには
- 本体工事費(建物本体を建てる工事にかかる費用)
- 別途工事費(建物本体以外の工事にかかる費用)
- 設計料
- 諸費用(登記費用、ローン手数料、税金など)
がかかってきます。
土地購入にかかわる手数料
土地を購入する際は、土地代だけでなく、仲介手数料がかかります。
仲介手数料は「土地価格の3%+6万円」です。
たとえば5,000万円で土地を購入する場合、仲介手数料は156万円かかります。
見えない費用
土地には買う前の「見えない費用」もあります。
事例1)水道の引き込み工事費
土地に水道の引き込みがされていない場合、水道の引き込み工事が必要となり、その工事費がかかります。
事例2)造成費
土地が更地になっていても、地面から数十センチほど上がっていることがあります。
この場合、その数十センチ分をすき取る造成費がかかります。
事例3)地中障害
地中を掘ってコンクリート基礎が出てきたら、それを撤去するのに何十万円もの費用がかかることがあります。
似たような事例として、遺跡が発掘されたり、二代前の建物の残骸が出てきたりというケースもあります。
事例4)地盤改良工事
地盤が悪い地域だと、地盤改良工事に費用がかかることもあります。
こればかりは地盤調査をしてみないと分かりません(詳細は後述)。
「一般的に、このエリアでは木造住宅で○○万円ほどで地盤改良を行っていますが、地盤が悪いと最悪の場合○○万円以上かかる場合もあります。その点はご承知おき下さい。」
と事前にリスク説明をしてくれる会社を選びましょう。
土地選びは、まず「予算決め」から!
家を建てたい地域の土地の相場を調べよう
次に、家を建てたい地域の土地相場を調べます。
土地の相場の調べ方には
- 公示価格を見ること
- 路線価を利用すること
の2つがあります。
公示価格の調べ方
公示価格とは、地価公示法に基づき、土地鑑定委員会が主に都市計画区域内を調査対象として、毎年1月1日時点における標準地の正常な価格を公示するものです。
一般の土地取引・相続税評価・固定資産税評価・金融機関の担保評価の目安として活用されるなど、様々な役割を果たしています。
国土交通省が運営している「土地総合情報システム」で簡単に調べることができます。
路線価の調べ方
路線価とは「道路に面している標準的な宅地1平方メートルあたりの土地の評価額」のことです。
路線価には、次の2種類があります。
- 相続税や贈与税の算出に用いられる「相続税路線価」
- 固定資産税、都市計画税、不動産取得税、登録免許税の算出に用いられる「固定資産税路線価」
単に「路線価」という場合は、国税庁が毎年8月ごろに発表している相続税路線価を指すのが一般的です。
路線価は国税庁の「路線価図・評価倍率表」で簡単に調べることができます。
ただし道路の接道状況や敷地の形によって、実際の評価額は変わってきます。
土地に関する法規制を確認しよう
土地を購入する前に忘れてはいけないのは、法規制の確認です。
土地には
- 建築可能な建物の種類
- 接道の義務
- 建ぺい率
- 容積率
- 高さ制限
- 斜線制限
- セットバック
など様々な規制があります。
建物の規模やデザインに制約を受ける土地があったり、そもそも家を建てられない土地もあるので、場合によっては「あなたの理想の家」を建てられない恐れがあります。
家を建てられるのは、都市計画法で市街化が意図された「市街化区域」です。
ただし市街化区域でも、12の用途地域があり、工業専用地域に区分される土地には家は建てられません。
市街化区域内にある12の用途地域とは
分類 | 用途地域 | 趣旨 |
---|---|---|
住居系 | 第1種低層住居専用地域 | 低層住宅のための良好な住居環境を保護する地域。住宅系以外では、小学校、中学校、高校、図書館、老人ホーム、保育所等が可。 |
第2種低層住居専用地域 | 小規模な店舗の立地を認める低層住宅の専用地域。住宅系以外では、2階以下かつ150平方メートル以下のコンビニ、レストラン等が可。 | |
第1種中高層住居専用地域 | 中高層住宅のための良好な住居環境を保護する地域。住宅系以外では、大学、病院、2階以下かつ500平方メートル以下の店舗、居酒屋などが可。 | |
第2種中高層住居専用地域 | 必要な利便施設の立地を認める中高層住宅の専用地域。住宅以外では、2階以下かつ1,500平方メートル以下の店舗、オフィスなどが可。 | |
第1種住居地域 | 大規模な店舗、事務所の立地を制限する住宅のための地域。住宅以外では、3,000平方メートル以下の店舗、オフィス、ホテル、ゴルフ練習場などが可。 | |
第2種住居地域 | 住宅と店舗、オフィスなどの併存を図りつつ、住居の環境を保護する住宅地域。住宅以外ではパチンコや、カラオケボックスなどが可。 | |
準住居地域 | 幹線道路の沿線などで、地域の利便の増進を図りつつ、これと調和した住居の環境を保護するための地域。200平方メートル未満の劇場、映画館などが可。 | |
商業系 | 近隣商業地域 | 近隣の住宅地の住民のための店舗、オフィス等の利便の増進を図る地域。 |
商業地域 | 主として商業その他の業務の利便の増進を図る地域。 | |
工業系 | 準工業地域 | 主として環境の悪化をもたらす恐れのない工業の利便を図る地域。住宅などの混在を排除することが困難または不適当と認められる工業地。 |
工業地域 | 主として工業の利便の増進を図る地域。住宅は可。 | |
工業専用地域 | 工業の利便の増進を図る時期。住宅は不可。 |
上に位置する地域ほど住環境として恵まれていますが、その反面、建ぺい率、容積率、建物の高さ制限など法規制は厳しくなります。
接道の義務とは
建築基準法では、幅4メートル以上の道路に2メートル以上接していない土地は建設地として認められません。
さらに旗竿敷地は、地域の条例によりさらに厳しい制限がかかる可能性があります。
建ぺい率とは
建ぺい率とは、敷地内における建築面積(建坪)の割合です。
建ぺい率(%)=建築面積/敷地面積×100
容積率とは
容積率とは、敷地に対する延床面積の割合です。
容積率(%)=延床面積/敷地面積×100
高さ制限とは
建物の高さやデザインに影響する規制です。
第1種・第2種低層住居専用地域では「北側斜線制限」と「絶対高さ制限」
第1種・第2種中高層住居専用地域では「北側斜線制限」
を受け、制限内に建物を作らなければなりません。
その他「道路斜線制限」が全地域にかかります。
北側斜線制限
隣の家の日当たりを保護するための規制です。
住居系の用途地域で設定される北側斜線は、敷地の北側の前面道路の反対側の境界線または北側隣地境界から一定の「垂直距離(高さ)」から立ち上がる斜線内に建物を納めなければなりません。
日影規制とは
建物が敷地周辺に落とす影を制限して、良好な環境を確保しようというものです。
第1種・第2種低層住居専用地域内では、戸建て住宅でも、3階建て以上や軒の高さが7メートルを超える建物は、対象となります。
日陰は刻々と変化する複雑な現象ですので、この検証方法は少し複雑です。
検証はプロに任せ、戸建て住宅でもこの日影規制がかかる場合があることだけ知っておけばひとまず大丈夫です。
道路斜線制限とは
道路とその両側の建築物の日照り、採光、通風を図るための規則です。
前面道路の反対側の境界線から、決められた勾配の斜線の内側に建物を納めなければなりません。
建物が後退=セットバックすることによる緩和があります。
土地に関する防火規制を確認しよう
ひとつの建物の火災が、簡単に近隣の建物に燃え移るようでは、密集した都市では被害が大きく拡大してしまいます。
そこで都市計画法では、地域全体で建築の防火性能などを規制し、都市を守るために「防火地域」と「準防火地域」を定めています。
防火地域とは
耐火建築物の建築を促進する地域で、建物が密集する都市部を指定します。
準防火地域
都市と郊外の中間地区に指定して、できるだけ建物を不燃化し、木造建築も防火構造とするものです。
法22条区域
これは都市計画法ではなく、建築基準法の規定ですが、法22条区域と呼ばれる区域があります。
この区域は、準防火地域の外にあり、この区域内の建物は屋根を不燃材料でつくるか、または不燃材料で葺くことを義務づけた区域です。
各地域についての措置は、建築基準法で具体的に決められています。
防火に関する構造制限・防火制限
制限 | 適用地域 | 階数 | 延床面積 | 制限内容 |
---|---|---|---|---|
構造制限 | 防火地域 | 2階以下 | 100㎡以下 | 耐火または準耐火建築物とする |
100㎡超え | 耐火建築とする | |||
3階以上(地階を含む階数) | 耐火建築とする | |||
準防火地域 | 2階以下 (地上階数) |
500㎡以下 | 制限なし。ただし木造建築物などで外壁・軒裏の延焼のおそれのある部分は防火構造とする。 | |
3階 (地上階数) |
500㎡以下 | 耐火・準耐火構造物または令136条の2に規定する木造3階建ての技術的基準に適合する建築物とする | ||
4階以上 | 耐火建築とする | |||
適用除外 | 50㎡以下 | 平屋の附属建築物で、外壁・軒裏が防火構造の場合 | ||
①高さ2m超の門・塀で、不燃材料でつくるか、覆われたもの ②高さ2m以下の門・塀 |
||||
防火制限 | 防火地域または順防火地域 | 屋根 | 耐火・準耐火建築物以外は、不燃材料でつくるか、葺く、または準耐火構造(屋外面に準不燃材料)とする、もしくは耐火構造(屋外面に準不燃材料)+屋外面に断熱材および防水材とする | |
外壁の開口部 | 地域内の建築物は、延焼のおそれのある部分に防火設備等を設置する | |||
準防火地域 | 外壁・軒裏 | 木造建築物等(準耐火建築物は除く)は、延焼のおそれのある部分を防火構造とする | ||
法22条区域 | 屋根 | 耐火・準耐火建築物以外は、不燃材料でつくるか、葺く、または準耐火構造(屋外面に準不燃材料)とする、もしくは耐火構造(屋外面に準不燃材料)+屋外面に断熱材および防水材とする | ||
外壁 | 木造建築物等は、延焼のおそれのある部分を土塗り壁または同等以上の有効な構造とする |
なお表中の延焼の恐れのある部分とは、隣接する建築物等が火災になった場合に、延焼する可能性の高い部分のことです。
火災の特性により、1階より2階の方が延焼を受けやすいことから、2階以上については5mの延焼限界距離が認定されています。
簡単に言えば「燃えやすい家は建ててはダメ」ということです。
周辺環境をチェックしよう
自分の足で必ず周辺環境を確認しよう
必ず自分の足で見に行き、資料や広告では分かりにくい交通状況や周辺の雰囲気を確認しましょう。
【周りの住環境】
- 騒音、大気汚染、悪臭などの有無
- 街並み
- 防犯や防災から見た安全性
- 日当たり
- 風通し
【交通の利便性】
- 最寄り駅までの交通手段と所要時間
- 通勤や通学のしやすさ
- 道路網の整備状況
【行政サービスの充実度】
- 医療サービスの充実度
- 福祉サービスの充実度
【生活の利便性】
- 買い物のしやすさ
- 金融機関が近くにあるか
- 総合病院、内科、小児科など各種医院が近くにあるか
【子育て・教育環境】
- 保育環境
- 安全な遊び場が近くにあるか
- 通学のしやすさ
現場に足を運ぶ際には、デジカメ、メジャー、方位磁石などを持って行くと役立ちます。
土地の履歴を確認しよう
軟弱な地盤だと地盤改良工事が必要になってきますし、地震などの災害にも弱くなります。
そこで土地の履歴を確認することも欠かせません。
- 周辺を歩いて、塀にヒビが入っている家はないか確認する
- 古地図を調べて、かつて沼地や田んぼではなかったか確認する
- 地名に「沼」「池」など水に関する単語が入っていないか
- 以前の用途が工場であれば、土壌汚染がないか
土地の購入前なら、自治体の都市計画図や不動産会社の造成計画図で土地の履歴を確認できます。
土地購入
購入したい土地が決まったら、紹介してくれた不動産会社に仲介を依頼し、希望金額や引き渡しの時期などの意向を伝えます。
購入申し込み後、不動産会社は土地の物理的な条件や権利関係など重要な事項について調査し、その結果を重要事項説明書という書面にまとめます。
この内容をもとに、売買契約の前に、不動産会社(宅地建物取引主任者)から重要事項の説明を受けます。
不動産会社によっては、重要事項説明と契約を同日に行う場合もあります。
しかしその場で専門用語をつらつらと説明されても正しい判断・確認ができないので、可能であれば契約日とは別に、事前に説明を受けた方が安心です。
契約当日は、不動産会社の立ち会いのもとで売主と買主(あなた)が売買契約書を読み合わせ、記載された契約条件を確認します。
その席上であっても、不満があれば変更を申し出ることができますので、納得できる契約を結びましょう。
契約を締結したら、その場で手付金を売主に、仲介手数料を不動産会社に支払います。
土地の登記とは
売買契約を終えたら、土地が自分のものになったことを法律上明らかにするために、所有権移転登記の申請をします。
オンライン申請も可能ですが、住宅ローンを利用する場合は登記の専門家である司法書士に頼む方が間違いがなく安心です。
売買代金から手付金を引いた残代金支払いの際
- 権利証(登記済証)
- 印鑑証明書
- 実印による登記委任状
など、所有権移転登記に必要な書類が売主から司法書士に手渡されたことを確認します。
その後、司法書士が管轄の法務局にて手続きをしてくれます。
登記が完了すると、登記識別情報(新しい登記済証)が発行されます。
同時に登記事項証明書を取り寄せ、権利部の記載がきちんと変更されているか確認します。
地盤の調査をしよう
敷地が軟弱地盤だと、住宅の重みで不同沈下が起こり、建物が傾くなどの事態を招きかねません。
また地震の際に、地割れや地滑りが起こるリスクも大きくなります。
購入前に土地の履歴は調べていても、保険だと思って、家を建てる前に専門業者に地盤調査を依頼しましょう。
地盤調査の種類
木造住宅はスウェーデン式サウンディング試験が一般的です。
試験用の道具であるスクリューポイント付きの鉄の荷重を、数カ所地面に垂直に回転させてねじ込み、そ際の荷重と回転数から地盤の硬さを測定する方法です。
費用は5万〜10万円ほどです。
ちなみに家を建てる予算が5,000万円だとした場合、5万円の調査費用は全体の0.1%です。
この0.1%の予算で安心が買えるなら、保険料としてはオトクだと思います。
土地を購入する前に地盤調査はできないの?
結論としては「売主と不動産会社による」です。
調査の結果もしも地盤が軟弱だった場合、「地盤改良が必要なので、その分値引きして欲しい」と言われるのは、やはり売り手としては嫌なものです。
また調査の手配・実施に時間がかかると、売主としては機会損失になるので渋りがちです。
でも購入前の調査は交渉次第なので、交渉をするだけはしてみましょう。
軟弱地盤だった場合の主な対策は?
軟弱地盤の層の厚みによって、地盤改良の方法(補強方法)は変わってきます。
土地と家づくりの両方を相談できる注文住宅会社の探し方
まずは家を建てたい地域にどんなハウスメーカーや工務店があるか探してみましょう。
ハウスメーカーの情報はホームページでも確認することが出来ますが、いくつものハウスメーカーを比較する時には紙のパンフレットの方が便利です。
こちらのページでは「土地はまだ無いけれど、これから注文住宅を検討したい」という方にピッタリの注文住宅会社から、カタログをまとめて取り寄せることができます。
土地と住まいづくりの両方が相談できるので、スムーズに理想の家づくりに注力することができます。