「家を建てるために、親が資金援助してくれることになった」という方が知っておきたい制度として、「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」があります。
父母や祖父母からの贈与が住宅の取得に関する資金なら、一定額まで非課税になる特例です。
非課税上限額は条件により異なりますが、300万円〜1,500万円と大きな額が非課税となります。
直系尊属から住宅取得資金の贈与を受けた場合の非課税とは?
父母・祖父母・曽祖父母からの贈与が
- 家を新築
- 新築住宅の購入
- 中古住宅の購入
- 中古住宅の増改築(リフォーム)
のための資金なら、贈与税が一定額まで非課税となります。
なお叔父・叔母は直系尊属には該当しません。
また配偶者の父母・祖父母も直系尊属には該当しませんが、養子縁組をしている場合は直系尊属に該当します。
住宅取得資金贈与を受けた場合の贈与税の非課税限度額は?
非課税限度額は時期や住宅の種類により異なりますが、非課税の特例の適用を受けようとする住宅の取得(新築・購入・増改築)に関する契約の締結日に応じた金額となります。
【住宅の取得にかかる資金の額に含まれる消費税等の税率が10%である場合】
住宅用家屋の新築等に係る契約の締結日 | 省エネ等住宅 | 左記以外の住宅 |
---|---|---|
2020年4月1日~2021年3月31日 | 1,500万円 | 1,000万円 |
2021年4月1日~2021年12月31日 | 1,200万円 | 700万円 |
【上記以外の場合 *個人間売買など消費税がかからない場合】
住宅用家屋の新築等に係る契約の締結日 | 省エネ等住宅 | 左記以外の住宅 |
---|---|---|
2020年4月1日~2021年3月31日 | 1,000万円 | 500万円 |
2021年4月1日~2021年12月31日 | 800万円 | 300万円 |
省エネ等住宅とは、省エネ等基準(断熱・耐震・バリアフリー)に適合する住宅のことで、
- 住宅性能証明書
- 建設住宅性能評価書の写し
- 長期優良住宅建築等計画の認定通知書の写しおよび住宅用家屋証明書(その写し)または認定長期優良住宅建築証明書
- 低炭素建築物新築等計画の認定通知書の写しおよび住宅用家屋証明書(その写し)または認定低炭素住宅建築証明書
いずれかの証明書などを贈与税の申告書に添付することにより証明されたものをいいます。
夫婦それぞれで住宅取得資金贈与の非課税の特例は受けられるの?
住宅取得資金贈与の非課税の特例は、夫婦それぞれで利用することができます。
ただし、それぞれで特例を利用するためには、住宅を共有名義にする必要があります。
共有名義にさえすれば、仮に、夫婦それぞれが、ともに実の両親から1,000万円ずつ贈与を受けた場合には、2人合わせて最大2,000万円までの贈与を非課税で受けることができます。
非課税上限額を超える金額の贈与を受けた場合はどうなる?
上限額以上の贈与では、超過分は課税されるため、あえて非課税限度内に抑えるのもひとつの手です。
タイミングが重要!住宅取得資金贈与の非課税の特例を受けるための条件
主な要件は以下の通りです。
- 贈与者は直系尊属(父母・祖父母・曽祖父母)であること
- 贈与を受けた年の1月1日において、20歳以上であること
- 贈与を受けた年の合計所得が2,000万円以下であること
- 贈与を受けた年の翌年3月15日までに入居すること
ここでの注意点は、贈与を受けた年の翌年3月15日までの入居要件があることです。
工事が遅れたり、引き渡しが遅れたりなど、入居が間に合わなかった場合は特例を受けることができず、修正申告も必要となりますので、贈与を受けるタイミングが重要になってきます。
最悪、屋根ができていればOK
贈与を受けた年の翌年3月15日までに新居に居住している状態を目指すべきですが、万が一間に合わない場合でも、実は屋根ができていればOKとされています。
住宅取得等資金の贈与税の非課税の適用を受けるためには、その贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅用家屋の新築(新築に準ずる状態として、屋根(その骨組みを含む。)を有し、土地に定着した建造物として認められる時以後の状態を含む。)又は取得をしなければならないこととされている(措法70の2丸1、措規23の5の2丸1)。
住宅取得資金贈与の非課税の特例を受けるための家屋等の条件
非課税の特例を受けられる住宅は、日本国内にある住宅に限られます。
新築住宅の場合
主な要件は以下の通りです。
- 登記簿上の床面積(マンションの場合は、その専有部分の床面積)が50㎡以上〜240㎡以下
- その家屋の床面積の1/2以上が居住用であること
中古住宅の場合
以下3つのうち、いずれかを満たすものが対象になります。
- マンションなど耐火建築物は築25年以内、木造などは築20年以内
- 新耐震基準を満たすことが証明されること
- 購入後に耐震改修工事を行い、贈与を受けた年の翌年3月15日までに一定の耐震基準に適合すると証明されること
増改築の場合
主な要件は以下の通りです。
- 登記簿上の床面積(マンションの場合は、その専有部分の床面積)が50㎡以上〜240㎡以下
- その家屋の床面積の1/2以上が居住用であること
- 増改築等にかかる工事が、「確認済証の写し」、「検査済証の写し」または「増改築等工事証明書」などの書類により証明されたものであること
- 増改築リフォーム工事費用が100万円以上であること
- 増改築リフォーム工事費用の1/2以上が、居住用部分の工事に要したものであること
土地の取得だけでも住宅取得資金贈与の非課税の特例は受けられるの?
住宅取得資金の贈与を使って「土地だけ」を取得することは不可能です。
ただし住宅とともにする土地の購入であれば、住宅取得資金贈与を使うことができます。
新築とともにするその敷地の用に供される土地等又は住宅の新築に先行してするその敷地の用に供されることとなる土地等の取得を含みます
1)住宅と土地を同時に購入する場合
「住宅を取得するための資金の贈与なので、土地の取得には無理なのでは?」と思われている方もご安心ください。
国税庁からの抜粋文にあるように、住宅とともにする土地の購入であれば、住宅取得資金贈与を問題なく使うことが可能です。
2)住宅の新築に先行して土地を購入する場合
国税庁からの抜粋文にあるように、家を新築するのに先行して土地を購入する場合(先行取得)でも、住宅取得資金贈与を問題なく使うことが可能です。
土地がない場合には、先に土地を買わなければ住宅を建てることができません。
贈与された住宅取得資金の全額を土地の購入対価に充て、建物は自己資金あるいは住宅ローンで購入することも可能です。
ただし土地を先行取得する場合には、贈与を受けるタイミングに注意する必要があります。
前述のように、贈与を受けた年の翌年3月15日までの入居要件があるからです。
たとえば「12月に贈与を受けて土地を購入、その翌年の5月に住宅完成」では要件を満たさないので、非課税の特例を受けることができません。
「1月に贈与を受けて土地を購入、同年の6月に住宅完成」などのタイミングにする必要があります。
3)土地だけを購入する場合
住宅取得資金の贈与を使って土地だけを購入することは不可能です。
国税庁からの抜粋文にあるように、「住宅と土地の同時購入」もしくは「住宅の新築に先行して土地を購入」でないと、住宅取得資金贈与の非課税を適用することができないからです。
住宅取得資金贈与の非課税の特例を受けるための申請手続きと必要書類
贈与を受けた年の翌年2月1日〜3月15日までの間に、
- 非課税の特例の適用を受ける旨を記載した贈与税の申告書
- 戸籍謄本
- 登記事項証明書
- 新築や取得の契約書の写し
など一定の書類を添付して、納税地の所轄税務署に提出する必要があります。
土地・建物の登記事項証明書は、登記所の窓口での請求、郵送による請求のほか、オンラインによる請求も行うことができます。
オンライン請求は、手数料が安く、平日は21時まで可能です。